■日時:2016年5月28日(土)13:00 上演時間1時間40分
■会場:北九州芸術劇場 B列19
■原作:井上靖
■出演:中谷美紀、ロドリーグ・プロトー
いやあ、中谷美紀ちゃん、凄まじい表現力です。
背景に動きだけのアクターがいるものの、台詞は中谷さんのみの一人芝居。
ステージ上も一部のみにライトが当たり、
客席はいつも以上に真っ暗だし、
まさしく「おやすみなさい」と言わんばかりの状況の中で、
気迫の演技で惹きつけ続ける中谷さん。
初演の時は「膨大な台詞に溺れてた」というレビューを読んでご遠慮したのですが、
再演のせいなのかどうなのか、まあ何度か言いよどむことはあっても、
問題のない素晴らしさ。
ある男に関わる3人の女性を一人で演じます。
ある男の愛人の娘~まだ若くて亡くなった母の秘密を知り動揺している、
ある男の妻~社交的で美しく派手に生きているようで、実は夫の不倫を13年前から知っていた、
ある男の愛人~ある男の妻の従妹であり憧れの存在だった
この3人を衣装と髪形を変えるばかりでなく、人格を変えて演じ切りました。
日本の古風な文体の台詞が、これがまた美しい。
中谷さんの声と台詞のクリアさで、とてもわかりやすく伝わってきます。
純文学っていいものです。
演出家はカナダ人なのですけどね。
こうも、日本文化を崇高に、当の日本人をも開眼させるものにするという
日本人としては不勉強をお詫びしたい気にさえなります。
もう一つ美しくて印象に残ったシーンは、
中谷美紀さんが鏡も見ずに、台詞も、手元も詰まることなく、
ごくごく自然なままに舞台の上で肌着から帯まで一人で着付けをされました。
凛とした表情にも、所作にも、その美しさに感服です。
舞台は逃げ回ってきたという意味が全くわかりません。
もっと舞台に出ていただきたいものです。
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