新国立劇場『骨と十字架』無料配信


■作:野木萌葱
■演出:小川絵梨子
■出演:神農直隆 小林 隆 伊達 暁 佐藤祐基 近藤芳正

9月の1か月間、無料配信でした。
よくこんなお宝作品を配信してくれたものです。
新国立劇場様ありがとう。
すごい作品でした。

■Story
ローマ、敬虔な司祭テイヤール(神農直隆)は
神に身を捧げる一方、古生物学者として人類の進化を研究。
バチカンの司教レジナルド(近藤芳正)がそれを知り、
上司である総長(小林隆)にテイヤールの処分を命じる。
総長はなんとか穏便に済ませるために、
同じく研究者で司祭のリサン(伊達暁)のいる北京に左遷させる。
北京では研究への邪魔は入らないが公の発表もできないという
飼い殺し状態。
それでも情熱をもって研究を進めるうちに
テイヤールは北京原人の骨をという大発見をする。
実在の人物のお話です。

人はアダムとイブから生まれたと言っているのだから
猿から進化だなんて不遜。
テイヤールは、神にも研究にも忠実、
相反するけれどもどちらも尊い、
どちらかを選ぶことはできない。
その矛盾にどう立ち向かうのか。

聖職者のお話なので、ずっと黒い衣装で
しずしずと動く静謐な世界です。
表には出ないけれどテイヤールの神と研究に対する情熱は熱く、
でもそれを抑えているから
その禁欲的な立ち振る舞いがたまらなくゾクゾクするのです。
衣装も素敵だし、一体この神農さんって何者?初見だよね、
と思っていたら、
カエルちゃんに「sasaさん『1984』で観てますよ」
と指摘され、ササメモ見返すと確かに拝見してました。
大杉漣さんの急遽代役になった方です。
信頼される役者さんなんだ、納得!

自分を遥かに超える研究への情熱に嫉妬するリサン、
これ以上の進化論は聖職者の座を追われると密告する弟弟子アンリ(佐藤祐基)、
総長は保身優先ながら、大発見のテイヤールをうまく利用したい総長、
神への冒涜をなんとしても許さない司教、
5人の聖職者の濃密な会話劇です。

周りが右往左往してても、
テイヤールはどちらもあきらめることなく
自分の信じる道を進む。

最後に「どこへ?」と聞かれて
「神のもとへ、私の神のもとへ」で終わる。

「私の」

神と進化論は教会としては相反するというかもしれないが、
「私の神」にとってはどちらも正しいはず。

衝撃の作品でした。
パラドックス定数野木萌葱さん、目が離せないな。

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