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彩の国シェイクスピアシリーズ『ヘンリー八世』

■日時:2022年10月16日(日)12:30
    1幕85分 休憩15分 2幕85分
■会場:北九州芸術劇場 大ホール P列サイド
■演出:吉田鋼太郎
■出演:ヘンリー八世:阿部寛
枢機卿ウルジー:吉田鋼太郎
トマス・クランマー:金子大地
キャサリン:宮本裕子
アン・ブリン:山谷花純
バッキンガム公爵:谷田歩
ノーフォーク公爵:河内大和

大石継太、間宮啓行、廣田高志、工藤俊作、櫻井章喜、
塚本幸男、飯田邦博、二反田雅澄、杉本凌士、水口てつ、
佐々木誠、松本こうせい、大河原啓介、鈴木彰紀、
齋藤慎平、松尾竜兵、石井 咲、古庄美和、山田美波、
坂田周子、沢海陽子、悠木つかさ
演奏:サミエル

6人も妻を変え、邪魔な相手を容赦なく切り捨てるヘンリー八世の物語。
20年連れ添った妻は何もしてないのに離縁され、
国政に貢献した家臣も、謂れのない罪で殺される。

軽く予習したところ、好色だし、残忍だし、身勝手だし
スキャンダラスで問題のあるヘンリー八世なのに、
枢機卿ウルジーの悪だくみにはまっただけで、
本当はいい国王、って設定になってたのよ。
ストーリー自体はシンプルで、最初はウルジーにご執心で
なんでもウルジーの言う通りだったヘンリー八世が、
次第にその本性に気付いて破滅させ、
国政は平和を取り戻し、めでたしめでたし。

ヘンリー八世周辺って実話がまるで物語のようだし、
ブーリン側からの視点にもできるから
面白いテーマなんだろうね。
全ては取り上げられないから、一部に絞ってたのだと思う。

正直なところ、台詞はマイクを使わないからちょっと聞き取りにくい。
蜷川門下の俳優さんが多いので、
吉田さんに似た朗々とした発声が多いけど、
後ろ向きの時とかやはり聞き取れない。

それでも、ずっと尽くしてきた家臣のバッキンガム侯爵と
20年連れ添ってきたのに謂われなく捨てられた妻のキャサリン
の独白シーンが圧巻でした。
男子の産めないキャサリン、叩き割るかのようにお腹を叩く
苦悩の姿が響きます。

吉田さんは悪役だけどなんでもお手の物なので、
しっかりユーモアと笑いも添えていて、
阿部さんは実は出番がそう多くないけど
存在自体が明らかに他者を凌駕した大きな王。
キャサリンの宮本さんは気高く美しかった。
河内さんと谷田さんは声がいいですねえ。

ステージの上部には、チェンバロ風の鍵盤楽器を奏でる奏者。
お顔立ちが外国だし、古き英国の雰囲気を強化してます。

鎌倉殿の13人でも難しい頼家役を演じ、
ドラマにも大活躍の金子大地くんに注目しておりまして
出てこないなあと思ったら、終盤にやっと登場。
カンタベリー大司教トマス・クランマーでした。
こちらも、反クランマー派が策略を巡らしますが、
結果、王が擁護して、地位を固めます。
大御所揃いの中、初々しくも、声量があってよく響きました。

ラストのエリザベス1世の戴冠式で客席全員で旗を振って歓迎します。
カンタベリー大司教とエリザベス、
先日の国葬で説教されていたので結び付けた方も多かったようです。
sasaも含め、観客が英国の皇族の関係とか慣習とかをわかっているわけはなく、
渡された旗を無邪気に振るという単純さに
自分でも呆れましたが、エンタメですからね、
みんなで楽しみましょう。

ここでクランマーが言うのは「ひとつひとつ徳を積みなさい」。
作品のキャッチコピー「不都合な真実はつぶせ」だったヘンリーが
クランマーによって浄化されたのかされなかったのか。