Monthly Archives: 3月 2023

You are browsing the site archives by month.

ミュージカル『ジェーン・エア』


■日時:2023年3月16日(木)18:00
1幕70分、休憩20分、2幕75分
■会場:東京芸術劇場プレイハウス K列サイド
■出演:

上白石萌音:ジェーン・エア
屋比久知奈:ヘレン・バーンズ
井上芳雄:エドワード・フェアファックス・ロチェスター
春野寿美礼:ミセス・リード/レディ・イングラム
仙名彩世:ジェーンの母/ソフィ/ブランチ・イングラム
樹里咲穂:ミス・スキャチャード/ベッシィ
折井理子:アボット/グレース・プール
水野貴以:アグネス/リア/メアリー・イングラム
中井智彦:ジェーンの父/トーマス/シンジュン・リヴァーズ
萬谷法英:ブロックルハースト/ロバート
神田恭兵:ジョン・リード/イングラム卿/牧師
江崎里紗、犬飼直紀、岡田悠李、萩沢結夢、三木美怜
大澄賢也:リチャード・メイスン
春風ひとみ:ミセス・フェアファック

RENTは感動したし、ナイロン@スズナリは堪能できた。

が、ここで王子の第一声を聴いた時点で
「あ~やられた」
王子の包み込むような歌声。
いつもお話の世界に包み込んでくれると思ってたんだけど、
いや、王子の歌は「読み聞かせ」なのだと思った。
観客に歌いながら話してくれているのだ。
伝えようという気持ちが最前線にある。
だからわかりやすくて心に響く。

レベチでございます。

萌音ちゃんとは年齢差も身長差もあるから
守ってやりたいと思うでしょうし。

ごめんなさいね、前回の橋本さとしさんの時は
(松たか子さんは大好きだったけど)
こんなにも感動しなかったよ。

暗い陰鬱な曲も
讃美歌のような曲も、こんなに名曲揃いだったとは…

屋比久ヘレンもベッドに横たわったまま歌うのに
声が響くし音程完璧。
ますます上手になったのでは?

と、大感動。
実はこの日もRENTに行く予定だったのだけど、
おけぴでチケット発見したものだから
危険を冒してチケットチェンジしたのだよ。
その甲斐あった。
そもそも、この遠征はジェーンのために計画したのに
肝心のチケットが取れず他で穴埋めしていたので
ギリギリの大逆転!
行けるものなら明日も行きたい!ほど素晴らしかった。

が、少し経ってよく考えてるとね、
このお話これでよいのかしら?という気になってきた。

2012年に博多座で観劇した時に
後ろにいた修学旅行の男子高校生が言った
「でもこれってあの奥さんが一番可哀そうじゃね?」
がずっと気になっている。

ロチェスターの正妻であるバーサが悪者で
彼女の策略にはまって結婚させられて、
邪悪な性格の上に精神病で発狂したので
隠れ部屋に閉じ込めた
というのがロチェスターの言い分。

バーサが好みの美人だったから好きになり
結婚するのを決めたのは自分だし、
精神病は本人の責任じゃないよね。
それを入院させずに閉じ込めたのは世間体?
そして何より重婚をしようとしたのはどうなの?

結果、奥さんが死んで幸せになってめでたしめでたし。

う~ん、いいのか?

王子が演じてるので、ロチェスター側は善人で被害者、
悪いのはバーサ、重婚も仕方ない
みたいになっていて
「赦し」がテーマであるけど、ロチェスターの行いは赦されるのかしら?
信仰がないからモヤモヤしてしまうのかもしれないけど、
宗教は自由だし、信者限定の作品ではないはずだし
ここでは素直に思ったことを留めておきます。

いやいや、もちろん文句を言っているのではなく、
イギリスのどんより天気のような陰鬱さが続く中、
ラストは靄が晴れて、明るく清々しいステージとなり、
ジェーンとロチェスターの寄り添うシーンは
本当に至福感に満たされた。

神田くんが意地悪ジョンほかであちこち登場したり、
折井さんと中井さんの歌はさすがだなあと思ったり
賢也さんがメイスンって勿体ないわあと思ったり。

そして、結論としては、こんなに感動させてくれたのは
ひとえに王子の力だということも確信した。
王子×萌音ちゃん×ジョン・ケアードの盤石のチームで作り上げる世界。
上質な作品です。

ミュージカル『ジキル&ハイド』


■日時:2023年3月16日(木)13:00
1幕85分 休憩25分 2幕65分
■会場:東京国際フォーラム ホールC 14列サイド
■出演:
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人
ルーシー・ハリス:笹本玲奈
エマ・カルー:Dream Ami
ジョン・アターソン:上川一哉
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄
宮川 浩 川口竜也 伊藤俊彦 松之木天辺 塩田朋子
麻田キョウヤ 岡 施孜 上條 駿 川島大典
彩橋みゆ 真記子 町屋美咲 松永トモカ 三木麻衣子 玲実くれあ
川口大地 舩山智香子

子どもの頃は本好きでしたので
このお話も読んでいて結構好きだった。
キワモノのイメージでしたが、
名作とされているからにはちゃんと説得力のあるストーリーがありまして、
ジキル博士は決して悪者を創造したかったわけではなく、
人間の善と悪をしっかり分けられれば、悪の方だけを切り捨てることができ
善のみにすることができるという仮説のもとに研究を重ね、
その薬を生み出す。

人体実験で試したかったけど、そこはなぜか周囲は良識があって反対され、
娼婦ルーシーの「私を試せば」→「自分で試す」に着想を得て
自分で人体実験をし、悪のハイド氏を生み出す。

でもね、人には善も悪も一緒に存在し、
同じ人なのだから片方だけを切り離すことはできない。
ハイドを滅ぼすとはジキル本人を滅ぼすこと。

つまりは二重人格となり、
片方ずつの人格が現れるので、
ジキルはハイドの悪事は知らないし、
いつハイドが現れるのかもわからない。

カッキーの
ジキルハイドジキルハイドの入れ替わりが見どころですね。
観てるほうも、今はジキルのカッキーなのか
ハイドのカッキーなのか見極めるのが忙しい。

音楽はフランク・ワイルドホーンですので、
音程が上下左右して難しい。

そんな難しい曲を、婚約者エマ役のDream Amiさんは完璧に歌っていました。
笹本玲奈ちゃんは珍しく娼婦役で、
むっちりした身体はお色気あるんだけど、
基本的にお姫様系だから
汚れ感がないのよねえ。

再演されるから人気公演なのだろうけど、
sasaはあまり感情移入できず、
リピはないかなあ。

ほんとは終演後、カッキートークショーの回でしたので
お話聞いてもう少し深掘りしたいところではありましたが
次を急ぐので後ろ髪ひかれながら退散。

ナイロン100℃ 48th SESSION「Don’t freak out」


■日時:2023年3月15日(水)19:00 2時間20分休憩なし
■会場:下北沢ザ・スズナリ
■作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■出演:
松永玲子 村岡希美/
みのすけ 安澤千草 新谷真弓 廣川三憲 藤田秀世
吉増裕士 小園茉奈 大石将弘/
松本まりか 尾上寛之 岩谷健司 入江雅人

噂には聞いたことあるけどスズナリという劇場初です。
アパートみたいな細い鉄の階段を上り、
中に入るともうギュウギュウ。
前席との間は膝で埋まっていて通り過ぎるのもやっと。
パイプ椅子に体操座りしてる感じ。
2時間20分休憩なしと言われたけど、
一度着席すると、もう引き返すことはできない。
「間隔を空けて」なんて言葉は無意味で「密」とはこういうことです。

さて本題のお芝居ですが、面白かった~
そして、マチネで『レント』とクリエの相性を感じたように、
これもこの劇場ならではというお芝居。
KERAの「劇場と作品のマッチングは大切」という言葉通りでした。

松永玲子・村岡希美の女中姉妹が
ご主人様家族に仕えているわけですが、
実は精神病ということになっているご主人様を
井戸の下の地下室に匿っていて、
ずっと地下にいると思っていたご主人様は実は抜け道から夜抜け出し
近所の女性たちを強姦してまわっていて…
ナイロンがこんな性的な描写をするのは初めてみました。
やはりスズナリという劇場のせいかも。

そうこうするうちに1人、2人とご主人家族は消えていき、
最後に残って笑うのは女中姉妹でした。
おしまい、みたいな。
全員が白塗りメイクなのでお化け屋敷のようなのです。

内容としてはグロテスクなのですが、
ナイロン劇団員のみなさまは
せりふ回しがどう鍛えられたのか何なのか、
イントネーションと間で面白ろおかしいのです。
みのすけさんの素っ頓狂な高音も健在。

客演の松本まりかさんは初見でしたが、
あざとさ感満載のお嬢様が
実は手玉に取っていたつもりの婚約者から熱湯をかけられ、
目を開けるのもやっとの包帯顔で服従の身となります。
前半調子にのってるだけに、
後半のあきらめきった姿がなんとも哀れ。

昔々のとても古いお屋敷の設定ですが、
ナイロンお得意のプロジェクションマッピングも
違和感なく取り入れられています。

罪を犯したり調子に乗り過ぎた人たちは自業自得の罰を受け
正直者の(いや決してそういうわけでもないけど)女中姉妹が
最後に笑った。

この劇場でナイロンのきっと根っこのようなものを観られたのは貴重。

ミュージカル『RENT』


■日時:2023年3月15日(水)13:30
    1幕80分、休憩25分、2幕60分
■会場:シアタークリエ 最後列補助席
■出演:
花村想太、甲斐翔真、遥海、SUNHEE、RIOSKE、
鈴木瑛美子、塚本直、吉田広大 他

花村マーク狙いで久しぶりにレント。
ソニンミミの時号泣するほど感動した大好きな作品です。
その時は福士誠治マーク、次が賀来賢人マーク。

花村くんは歌もダンスも文句なく、
問題はこの作品は群像劇だから、
マークだけか主役ってわけじゃないところ。
ジャージーのように花村くんの高音を堪能!とはいきません。
声のハリはあるしダンスはキレッキレ。
ボヘミアンのダンスもこれまで観たマークの中で一番!
さりげなくロボットダンスもキマッてます。

そして予想以上によかったのが甲斐ロジャー。
ロッカーでワルっぽさが魅力のロジャーは
背も高く体型もしっかりした甲斐くんにぴったり。
甲斐くんはもどかしい自分にイラつきながらも
歌は正確で、動きも適格。
ムーランで王子とダブルキャストになるのも納得。
ベテランから一人、若手から一人
ってのも面白い競演になりそうですね。
王子は王子様キャラ、悶々と悩ませたら天下一品ですが、
不良系が合うとは言えない。
本人が言う通り、品が隠せない。
両方似合う甲斐くん、役の幅は広いかもしれません。

一番好きだったのは遥海ミミ。
痩せたモデル体型ではなく、
肉感のあるボリューミーな身体。
その身体で体当たりなダンスで自分を表現し、
ロジャーに向かっていく気迫が凄まじかった。
ソニンはミミを演じる時、身体を絞って臨んでましたが
ショーガールなのでボリューミーでも良かったのにね。

モーリーンも大変な役ですね。
再演を重ねるごとに過激さが増していってます。
前回よりさらにおかしなキャラクターになっていく。
ソニンもよく引き受けたものです。
あのパフォーマンスの意味はいまだによくわからないけれど
強い抗議と主張があることは確かなので
後日調べてみたいと思っています。

レントって若手の登竜門的作品で、
キャストさんたちは、
ここで勝負して上にあがっていこうという気迫に満ちている。
そこが、登場人物たちの
レントも払えず、ぎりぎりの生活、ぎりぎりの精神状態
と重なって、熱い舞台になるのだと思う。

さらに、レントにはシアタークリエがぴったり。

以前福岡市民会館というsasaの歳よりも古い
合唱コンクールもピアノ発表会なんでもありのホールで
観たことがあるのだけど、
その時ばかりは感動しなかったの。
後方席が広がってるタイプのホールで音がバラける。
クリエは歌長方形タイプで音も熱量もギュッと凝縮する。

これからもレントはクリエで観たい。