Category Archives: ミュージカル・お芝居

ミュージカル『RAGTIME』


■日時:2023年10月8日(日)12:30 3時間5分
■梅田芸術劇場
■出演:ターテ:石丸幹二
コールハウス・ウォーカー・Jr.:井上芳雄
マザー:安蘭けい
サラ:遥海
ファーザー:川口竜也
ヤンガーブラザー:東 啓介
エマ・ゴールドマン:土井ケイト
イヴリン・ネズビット:綺咲愛里
ハリー・フーディーニ:舘形比呂一
ヘンリー・フォード&グランドファーザー:畠中 洋
ブッカー・T・ワシントン:EXILE NESMITH
新川將人 塚本 直 木暮真一郎
井上一馬 井上真由子 尾関晃輔 小西のりゆき 斎藤准一郎 Sarry 中嶋紗希
原田真絢 般若愛実 藤咲みどり古川隼大 水島渓 水野貴以 山野靖博

あきらめていたこの作品、
休日出勤の代休が取れることになり
え?突然の3連休になった。
これを放っておく手はない!GO!

本来の目的は違ったのですが、
突然の計画だったので宿が取れずに大阪で泊まることになり、
なにげにおけぴ覗いたら
チケット放出されてまして。

ムーランほど派手じゃないし、
次のベートーヴェンの方が期待してしまうから
この作品あんまり話題になってなかったよね。

ところがこれが実際はとても良い作品でした。
決してハッピーエンドではないんだけど
心温まるという。

人種差別、貧富の差などがテーマで
王子は黒人のジャズピアニスト。
少しだけ濃い色のメイクです。
でもねえ、もともとプリンスキャラだから
少しくらい茶色くするだけでは全く黒人には見えない。
ここ、かなり違和感だった。
アジアンだって十分差別対象だから黄色人種ではダメだったのかな?
ジャズピアニストは難しいかもしれないけど。

コールハウス(井上)売れっ子ピアニストになって

フォードの自動車買ったら
白人にボコボコにされて
もう泣き寝入りはしないと、差別に立ち向かう。

もう一組、貧しいユダヤ人ターテ(石丸)と
裕福な白人マザー(安蘭)という世界があって
主演クラスの多い群像劇。
主演は石丸さんのようなので王子のびのび。
ファンはホッとします。

マザーの弟ヤンガーブラザーは東くん。
東くんを最初に拝見したのがTDVだったので、
アルフレートにしては背が高すぎてちょっと…
だったのが、ジャージーにご出演ということは
相当歌が上手なわけで、
なにせお顔が美しいよね。
そして、滑舌が悪いようでいて長台詞も完璧なの。

楽しみにしていた舘形さんは
思いのほかダンスがなくてね。
妖しい衣装でポーズはとるんだけど、
これは舘形さんの無駄遣いではないのか?

sasaが観たRENTミミのナンバーワン遥海ちゃんは
慈愛に満ちた表情や演技もよくて
その心が表れる歌声。
そして王子との歌のバランスが絶妙。
一歩引いての歌声なので
王子も出しゃばることなく互いを引き立てあうの。
RENTが良かったのは偶然じゃなかったわ。

コールハウス(井上)はその奥さんを殺され、
怒りで暴走し、人が信じられなくなったところを
もう一度信じてみようとして裏切られる。

その一方、ターテとマザーは心を通わせ、
最終的に家族になった。
ここで、あ~良かったと幸福感に満たされ、
泣きそうになったよ。

人種差別というテーマ自体はちょっと凡庸かなとも思いつつ、
静かに良い作品でした。

『桜の園』追記

書き残したことを追記しますわ。

先行で買ったとはいえ、お席は最前列でした。
ここのところ良い作品が多いのに
お席の方は空席が目立ちます。
これも2階封鎖(2階席は売れてなかった)。
だってチケット高騰なんだもん。
これってきっと材料や経費が上がってるだけで
役者さんの出演料とかスタッフさんのお給料が上がってるわけじゃないよね。
もしこの高騰が収入にも影響するのであれば
日本全体のお給料も上がって
生活水準は変わらず済むのに
そうじゃないからつらくて
やはりチケット買う買わないには大きく影響してくるよね。

で、話変わって、主演ラネーフスカヤの原田美枝子さん。
もともととても好きな女優さんで、
舞台は珍しいから、原田さん目当てで観に行ったの。
その通りに、最前列で観た原田さんは美しかった。
そして、最大ピンチの状況なのに
きっと何とかなるわ、誰かがなんとかしてくれるわよ、
の呑気な奥様役がぴったり。
周りの男性陣はみんななんの役にも立たなくても
ラネーフスカヤを愛していて、
気持ちだけは助けたいと思っている。
そんな誰からも愛されるラネーフスカヤ役がぴったりでした。

あとは成河さんですね。
きっとめんどくさい演技派の成河さんは
新しい思想を語るトロフィーモフにぴったりですよね。
最初ちゃんとキャストを確認してなくて
なんかいい役者さんがいるなあと思ったら
成河さんでした。
やっぱり際立った方なんですね。

八嶋智人さんはコミカルな役かと思ったら
今回の中で一番現実的でした。

演出は去年『セールスマンの死』で拝見したショーン・ホームズさん。
あれは鼻中隔湾曲症手術直後の悲惨な状況で
這うようにして拝見したので記憶が薄いですが
お話自体が良かった。
外国の作品を外国の方が演出ですが
普遍のテーマにもっていくのがすごいですね。

以上、追記でした。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』


■日時:2023年9月24日(日)13:30 3時間(休憩20分)
■会場:キャナルシティ劇場 A列サイド
■出演:原田美枝子、八嶋智人、成河、安藤玉恵、
川島海荷、前原滉、川上友里、竪山隼太、
天野はな、市川しんぺ、松尾貴史、村井國夫

チェーホフの『桜の園』です。
実は先日の『兎、波を走る』の劇中劇って『桜の園』だったんだ。
お話自体は全く知らなかった。

ステージには上空に巨大なコンクリートの箱の蓋のようなものが
ドーンとつるされています。
奥には金網の壁と有刺鉄線。刑務所か?
そしてお話自体はそれがないかのように普通に進んでいきます。

領主のラネーフスカヤ(原田美枝子)が久しぶりに領地に帰ってくると
経営力のない兄のせいで領地である“桜の園”を競売にかけられようとしている。
打開策もないのに、危機感もなく過ごす現実を受け入れようとしないラネーフスカヤたち。

一方、桜の園を出て新しい思想に生きようとする
トロフィーモフ(成河)とラネーフスカヤの娘アーニャ(川島海荷)たち。
かといって、ラネーフスカヤに異見できるわけでもなく、
結局、桜の園は予定通りに競売にかけられるの。
それでもラネーフスカヤが路頭に迷うだけでもなく
苦心したわけでもないのに受け入れ先は見つかって
若者たちは新しい地へと
バラバラの道を歩んでいく。

変革を受け入れない年寄り組と
新しい時代を築いていこうとする若者組
というよくある、凡庸なテーマなのかなと思いながら観ていました。

でも、今舞台にするからには、何かしら今と共通のテーマ
今の人も共感できるものでなければならないわけで、
どこなのかしら。
ラストは老召使フィールス(村井國夫)が、
置き去りにされたことも気付いてもらえず、
桜の園に取り残され息絶える。
そしてずっと舞台の上にあった石の箱が下りてきて
フィールスを閉じ込める。つまりは石棺。
古い時代は終わった。

とか?

が、いつものようにsasaの考察は甘い。

他の人のレビューを見てわかった。
チェーホフ→ロシア→ウクライナ侵攻
あの石の箱と有刺鉄線はチェルノブイリだったのだ。

桜の園を競売で買ったのは、
桜の園の農夫の息子だったロパーヒン(八嶋智人)なのだが、
今や実業家なので、別荘地として貸し出すか
転売するだろう。
そこに原発が立ち、大惨事が起き、
実際に今は石棺で覆われている。

見たくないものは無理やり封じ込めてなきものにする。
世界から抹殺する。
そしてそれを日常では忘れつつある私たち。

これって先日の『兎、波を走る』と同じではないか。

その問題というよりもそれを忘れようとしている自分。

う~ん、2本続けて問題を自分に叩け付けられた。

作品を通じて問うてくれてありがとう。

万能グローブガラパゴスダイナモス 第31回公演 『ひとんちで騒ぐな』


■日時:2023年9月8日(金)19:00
■会場:西鉄ホール C列20番
■演出・作:川口大樹
■出演:椎木樹人 石井実可子 脇野紗衣 澤柳省吾
千代田佑季 青野大輔(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)
土居祥平(土居上野:ワタナベエンターテインメント)
中村豪志(アンビシャスzero)

ガラパの初期作品の再演です。
テーマとか考えなくて良くて
ただただ笑っていればいい王道コメディ。
出世してると嘘をついて地元に戻り
実家には見知らぬ夫婦が住んでいて
立候補したくない幼馴染とその秘書とか、
ごまかしと見栄でドタバタドタバタ。

面白かったですけどね、
ガラパにはもう一押し期待しているものですから
ちょっと物足りなかったかな。
笑い続けているうちに
そこに温かい気持ちが流れているのが好きなのよ。

『星降る夜になったら』とか『月ろけっと』とか
最高だったけどなあ。
あと横山さんが育休中なのもパンチが足りなかったかも。

また次回に期待しましょ。

NODA・MAP 第26回公演『兎、波を走る』


■日時:2023年8月22日(火)18:00 2時間10分休憩なし
■会場:博多座 2階B列サブセンター
■出演:高橋一生 松たか子 多部未華子
秋山菜津子 大倉孝二 大鶴佐助 山崎一
野田秀樹

いつも難しいNODA・MAP。
どうしようかなあと思っているうちに
結局チケット合戦には歯が立たず、
ギリギリになんとかご縁をいただいたので
不安を抱えつつ行ってきました。
このメンバーですからねえ、行かないのは諦めきれない。

「兎、波を走る」って諺らしいです。
野田さんご自身も最初は知らなかったらしく、
この芝居を書こうとした時に
この諺が向こうから走ってきたらしい。

いつも3階席が定番ですので2階は珍しい。
博多座の2階は見やすくて結構よいです。

前半、高橋さんが走ってなにやら早口で叫びたおし、
こういうのって野田さんが遊眠社のとき
「舞台に風を起こす」と言いながらやってたことですが
あーまたこういう訳わからん内容かあ、と気落ちしてたら
高橋さんの台詞が「何言ってるかわかんないでしょ?」
だったので、そうか、ここはわからなくていいんだ、
と気が楽になった。

兎といえば「不思議の国のアリス」。
ただ、今回は兎(高橋一生)を追いかけるのは
アリス(多部未華子)ではなく
アリスの母(松たか子)。

アリスがいなくなって兎を追えばみつかるかと
走って探し回るのです。
ドタバタやってるうちに
「38度線」って声が。

え?

子どもが行方不明、探す母、38度線…

そしてはっきり「拉致」という言葉が出てきた。

さらに、兎は「アンミョンジン」と名乗る。

ゾーっとした。
そうか、そういうことか。

アリスが袋に入れられて船に積み込まれるシーンまであって
どんどん鮮明になっていく。
嫌な雰囲気が立ち込める。

お話はさらに劇中劇というフレームに囲われてて、
アリスは見つからず、何の解決もしないまま
母の悲しみを残したまま終わる。

拉致問題は何の解決もせず、
今は連日ミサイルを発射されても「遺憾です」しか言えず、
日本人の怒りはどこにもぶつけられず
やるせない気持ちが充満。

いや、拉致問題については
sasa自身も「そういえば…」みたいな気持ちになっているのは事実で
今後どんどん忘れられていくかもしれない。

野田さんのテーマは「不条理」。
うん、伝わった。